
以前にもお話しましたが、わたしの最初の料理の先生は徳川家の最後のお料理番だった礒村さんです。その礒村さんの得意料理の一つに、「バラ寿司」があります。「バラ寿司」は礒村さんのふるさと岡山県の郷土料理です。ちらし寿司なのですが、その名前を聞いた時、期待感にムネが膨らみました。期待に違わずとてもおいしく、食べるのを楽しみにしている食通の方も多い一品でした。
お祭りやお祝い事があったとき、秋田県では巻き寿司を食べることが多いと思います。私は甘い玉子焼きの入ったものが好きで、今は亡き伯母が遊びに行くと必ず作ってくれたお重いっぱいの巻き寿司をなつかしく思い出します。バラ寿司もいいですが、もう一度食べてみたいのは、やはり大好きだった伯母のつくったお寿司です。
おいしさを科学するということも言われていますが、わたしは人が感じる食べ物のおいしさは主観的なものであり、そしてとても個人的なものではないかと思います。それは、一流といわれる料理人の方とお話する時にも感じます。日本中の食材を知りぬいた人でも、ふるさとの味に愛着があります。
実は私は無類の焼きそば好きです。これには訳があり、母の焼きそばも絶品なのですが、子供の頃の境遇が影響しています。家業の旅館が忙しかったため、よく一人で外食していたのです。近くにお友達のお母さんがやっている焼きそば屋がありました。ですから今でも本格的な中華の焼きそばよりキャベツとひき肉しかはいっていない素朴なソース味が好きです。「孫子の食育、百までも」という講演をしたことがありますが、まさにその通りだと思います。環境が味覚をつくります。
今回、ご紹介した巻き寿司の具は玉子焼きがメインですが、中に入れる具はどんなものでも、形も悪くても、愛情がはいっていればおいしくできます。
のりに酢飯と好みに具をいれて簀巻きでまくだけです。家庭の味です。